一人で映画に…

ここ三年ぐらい、意識して何十年ぶりということをやってみている。
結婚して実家で兼業主婦していたよりももっと自由が無くなり、
家と家族に縛られ続けていた。
それを止めるために、気持ちも生活パターンも変えている。
食事も惣菜を買って手抜きしたり、
大掃除も辛い冬をやめて秋に変えたり。
美容院に行くようにしたり、時々レギュラーコーヒーを淹れたり。
そんな中、とうとう意を決した。
これも２０年以上ぶりだ。
一人で映画に行く。
家族につき合ってではなく、自分が観たい物を自分の都合の良い日に行く。

大好きな人が教えてくれた映画で、大好きなイタリアのもの。
「QUANTO　BASTA」

あの居心地の良さが蘇った。
少し埃っぽい街の空気と変わらぬ石畳。
金持ち相手の洗練された現代風の非日常空間と昔ながらの落ち着いた
宝箱のような街の佇まいが同居している。
自分たちの生活の基盤は貧しくても伝統的で美しくて温かい宝箱のほう。

イタリア人特有の慎ましやかで心の豊かさのある登場人物たちの
素晴らしい生き方のエッセンスがたっぷり詰まっていた。

人が人であること。
心が人を作っていること。

幸福のありかを探す人が多い今の世の中で、どの時代でも変わらぬ
普遍的な真実の答えを知っている。
とても小さな会場で１０人程度の客しかいない中、小さな画面で
観ることすら、等身大で心地良く感じさせられてしまう。
そんなイタリアらしい映画だった。

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